2010年05月29日

3丁目の女ができるまで。

 長いので追記にて。
 まず、投稿作に至るまでに書いた3つのテキストデータをUPしてみる。

+3丁目の女+1

 まず、私と美佳の関係から記さねばならない。私達はバス通りを挟んで向かいに住む同い年。互いに一人っ子で、過疎傾向の町では貴重な幼なじみであった。美佳は母親が手縫いしたバラ柄のスカートを好んで身に付け、私はデニム地のジャンパースカートを好んだ。美佳は金曜日にピアノを弾き、私は土曜日にスイミングクラブへ通っていたが、それ以外の日は大概一緒に過ごした。彼女の家や、私の家や、公園で。小学校中学校は同じ。美佳は進学高に進み、私は女子高英語コース。何の因果か同じ大学に進み、美佳が薬学部を卒業し、私は文学部を卒業した。それぞれに付き合っている友人はいるが、私達は良い関係を続けている。
 次に私の火遊びについて記す必要がある。両親がいない夜、私は庭で物を燃やす。それは写真であったり、ティッシュを丸めたものであったり、角砂糖であったりする。ミニバラにブランデーをかけて火をつけるとむわっとした甘い香りが立ち込め、私はトリップしてしまう。水を張ったバケツを横に置き、後始末は間違いなく行う。
 最後に週末の予定を記そう。9時ヘアサロン。夜、両親外出。持って帰った髪束を焼く。炎が上げる音と匂いをしっかりと記憶する。


+3丁目の女+2(途中)

「バラぁ? うーん、バラかあ。フォアローゼズとかじゃつまんないって言うよねぇ」
 ぼやきながらもボトルを選ぶ美佳。予期せぬ再会。美佳とは実家がバス通りを挟んで向かい同士。もう何年も帰っていないけれど。うっかり地元になんか来るんじゃなかった。
――カツンカツンカツンカツン。
 修行先の流儀でゆっくりと、しかし大きくシェイカーが振られる。華奢な手からとてもスマートな動作でグラスに注がれる。
「双葉ちゃんが一人でお酒飲んでるとか、信じらんない」
「そーゆーイメージなのか。あはは。それは反撃した方がいいのかな」
 幸運なことに店には二人きりで、不運なことに二人以外誰もいない。
 わたしたちは幼なじみと言うより、共犯者だと思う。秘密を共有していた、という意味において。わたしは美佳が算数で0点を取ったことを知っているし、美佳はわたしが作文を盗作したことを知っている。0点のテストはわたしが燃やし、作文は美佳に下書きしてもらった。


+3丁目の女+3(途中)

 家の前はバス通り。2時間に1本だけバスが通るが、17分歩いて私鉄の駅に行ったほうがどこに行くにも便利ではある。
 幼い頃は花柄のスカートが大好きだった。現在スカートに類するものは1枚も持っていない。
 机の上にはマグカップが2つ。一方には29本の色鉛筆が、もう一方には冷めてしまったカフェオレが入っている。
 5回目のクロミッドを飲む。薬袋をくしゃくしゃにしてゴミ箱へ投げつける。入らなかったけれど拾いなおすことはしない。椅子を蹴る。痛い。



●投稿作について−上
 何よりも「女」を書こうとしました。選評でも「女」を描いたものを高評価したつもりです。……というのを全くもって書きそびれていたというね。
 あと「3丁目」は、「3」つ目の場所を、包「丁」でぶった切ったもの、というイメージ。例えば真っ白なA4用紙を3等分にカットして、3枚目の右下に女を立たせて全体を見渡す感じ。

●上記1〜3について
 1はイメージを自動筆記的に書けたもので、でも初稿で600文字近くになっていて、いろいろやってなんとか500文字に落とし込んだ。けど、情報量が多いわりに部品の寄せ集めにしかなってなくて、とりあえず他に書こう、と。他のを書いているうちにアイディア浮かべばそれを織り込んでシェイプして投稿しようと思っていました。解説すると、主人公が「3丁目」で、バス通りを隔てた向かいにいる「2丁目」を見ている、といった感じ。1段落目で3丁目と2丁目を描いて、2段落目で3丁目を見て、3段落目で3丁目と2丁目の境界線を引いた。

 で、2。3段落ではなく3場面にしようと。1と同じ人物から同じ2人の関係を書こうとした。でも1よりも短くまとめようとして書き始めたのに、途中まで書いて400字を超えていて、カウントした時点でボツ決定。要らない情報としては、作中で作っていたカクテルはジャックローズです。

 3は、「3段落ぶった切り」を一旦忘れて書いてみた(一旦忘れて、後から3段落にしようという目論見はあった)わけですが、書いているうちに行き詰ってしまったのでそこで終わり。出していたら<15>と見た目が少し被っていたわけで書かずに正解といったところ。「クロミッド」は不妊治療の内服薬です。

●「3」について
 連想されるのは、ただただ「美しい」こと。他の手の入らない閉じた美しさ、安定感。(「閉じた」には「助言を無視」の意も)
 最小の完全数とか、最小のフェルマー素数(正三角形の作図)とか、πに近いとか、三脚とか、トライアングル(楽器)とか、その他いろいろから。
 あと忘れちゃいけない、私が一番好きな数字が「3」であること。名前にも入れてる。
 ちなみに数学の成績は芳しくありませんでした。常に平均。

●投稿作について−下
・どうしても「女」を描きたい。
・「少女」でも「女性」でもなく「女」であることを重視。連想された「所帯を持っていそうな」「色欲」「そこそこ金は持っている」「火遊び」。
・「丁」を辞書で引くと「成年男子」「男の召使」とあり、ウエイター登場に至る。
・逸れた連想だけれど、「丁々発止」から、火花散るやり取りをイメージする。
・「ウエイター」との「火遊び」の会話をする「女」という軸。
・3丁目に住み、街のカフェでブランチを取る女。
・若いウエイターのいるカフェ、食事(=丁)。
・スカートを振る(=挑発、誘惑)
・スカートの中が空っぽ(=妊娠していない、子を望む)
・ミントを摘む(=手を出す)
・庭のミント(=家、家庭、3丁目)
・可愛らしい音がみっともない(=歳相応である、家があることを忘れない)
・3段落ぶった切り(3丁目)
・主人公の女の背景は1〜3参照、ただし3丁目とは限らない。

●反省点
 表記揺れ(「アイスティー」と「アイスティ」)。誰か指摘してくれよー。
 気合が空回り。いくら好きな数字だからって、力入れすぎ。
 もう少しあからさまな「3丁目」を出してもよかったのかも。
posted by 三里アキラ at 02:56| Comment(0) | TrackBack(0) | 日々徒然 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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