2011年03月12日

+ドミノの時代+

 コインに準えるのは快と不快の二面を軸とするから。彼女たちはダイスの時代、すなわち五感+αが研ぎ澄まされる時期に深く繋がった。ドミノとはつまり、知覚を置換できるようになることを意味する。
 廊下で笑いあった翠も、藍里も、桃子も、葵も。皆、病んでいった。一人健やかにある茜は自身に引け目を感じる。病んだフリを演じ始める。青を基調とした細密な静物画をナイフで破いてイーゼルから外す。喋ることを自ら禁じ、赤い絵の具だけを出してカンバスにバツを四つ描く。大きく。空白は斜めの正方形。絵筆にパレットから赤い絵の具。またバツを描く。繰り返す。気付けば朝焼け。気を失うように床に倒れこみ、眠る。夜になり痛覚に目を覚ますが、闇を眩しく感じる。明かりを点ける。冷たい。テレビン油の強い匂い。茜には甘い。苦いパンを口に押し込む。辛いミルクで飲み込む。吐き気が鼓膜を叩く。またカンバスに向かい絵筆に赤い絵の具を取る。バツを四つ。そんな日が半年続き、お望みどおりの入院。ただし任意。
 白い病室は、想像とは違いとても穏やかだった。四人もこんなに穏やかだろうか。茜は服薬を見守られながら思う。そうだといい。
 手に赤いサインペン。持ち込んだ一冊のスケッチブックはバツの上書きで真っ赤だ。茜の目には襲い掛かる色彩々の波。中央に残る白い正方形。黒い正方形の残像。一度ドミノまで至るとダイスにもコインにも戻れない。誰か、止めて、遮って、何も感じたくない! 悲鳴は体の奥底に押し込めた。そして無言でスケッチブックに赤いバツを叩きつけ続ける。

++追記。++

 地震・津波被害にあわれた方、負けないで。
 私には他に何もできないので祈ります。

 さて、500文字の心臓第102回タイトル競作参加。

・今回ぎりぎりで書き上げたので、投稿した後もざくざくと改稿していた。
・ら、650字を超えるというオオゴトに。
・選評のときに書いた、最初に思いついた「青の時代」というのはピカソ。
・赤いバツは「茜の視点で友人たちを否定する」の意。
・コイン→ダイス→ドミノってつまりギャンブルが複雑化していく過程。
・一つの物事を見ても、何を感じるかはギャンブルだよねって言う発想。
・それ以外でもいろいろネタは突っ込んでみたけど、ほとんどが空振り。
・ちょっとパズルが過ぎたかな、とは。
・投稿分は選評でも書いたけど、自分でも薄っぺらいと思う。
・改稿したからといって濃くなったかどうかは知らない。

テスト的に【選評】ドミノの時代
http://otd5.jbbs.livedoor.jp/500_select/bbs_plain?base=3983&range=21

 結果:○○○
 以下、投稿分。

++ドミノの時代++

 コインに準えるのは快と不快の二面を軸とするから。彼女たちは賽の時代、すなわち五感+αが研ぎ澄まされる時期に深く繋がった。ドミノとはつまり、知覚を操作できるようになることを意味する。
 廊下で笑いあった翠も、藍里も、桃子も、葵も。皆、病んでいった。一人健やかにある茜は自身に引け目を感じる。病んだフリを演じ始める。喋ることを自ら禁じ、赤いサインペンでスケッチブックにバツを四つ描く。大きく。空白は斜めの正方形。一枚捲る。またバツを描く。繰り返す。気付けば朝焼け。気を失うように眠る。夜になり痛覚に目を覚ますが、黒い光を眩しく感じる。苦いパンを口に押し込む。吐き気が鼓膜を叩く。またスケッチブックを開き赤いサインペンを手にする。そんな日が半年続き、お望みどおりの入院。ただし任意。
 白い病室は、想像とは違いとても穏やかだった。四人もこんなに穏やかだろうか。茜は服薬を見守られながら思う。そうだといい。
 手にまた赤いサインペン。持ち込んだ一冊のスケッチブックはバツの上書きで真っ赤だ。茜の目には襲い掛かる極彩色の波。中央に残る白い正方形。黒い正方形の残像。誰か、止めて、遮って。悲鳴は体の奥底に押し込めた。
posted by 三里アキラ at 13:15| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction 心臓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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