2011年06月25日

+スイーツ・プリーズ+

 片思いをこじらせた私は、キャンディを溶かし固め磨いて等身大の貴方を作った。たくさん撮った写真や手に入れた健康診断のデータを元にオレンジ色の貴方を。私のベッドに横たえる。頬を撫ぜるとぺたぺたした。口をつけると甘い香り。唇の部分を舐めてみる。甘い。首筋、耳元。甘い。胸板。甘い。どこもかしこも甘い。きっとこの甘さが幸せ。キャンディに貴方の名前をつけ、毎晩舐めて眠りにつく。休みの日は一日中舐める。裸の貴方は私のキスを快く受け入れる。本物の貴方とは大違い。本物を追いかけるのはやめ、私はキャンディの貴方に夢中になった。とろけるような甘い時間。貴方は次第に歪になっていくけれど、私はかまわず舐め続ける。
 夏。帰宅すると、貴方に黒く蟻が群がっていた。私は怒った。私の貴方を私以外が味わうなんて! ゴキブリ用の強い殺虫剤を出るだけ吹きかけ、蟻を払い、私は歪な貴方に口付ける。変な味がしたけれど、深く舐めればちゃんと甘い。甘い貴方。と、吐き気が襲う。いやよ、吐くもんですか。貴方を全て舐めてしまうの。貴方を私の血肉にするの。強い吐き気で目が眩む。いやよ、舐めるの。甘い幸せを、舐め続ける。舐め続ける。舐め続ける。
posted by 三里アキラ at 00:01| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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