2011年08月06日

+ペパーミント症候群+

『子供産めないし産まない』
 ネットに書き込んで、数分後に消した。その夜、旦那から「たまには飲みに行かない?」と携帯にメール。待ち合わせのバーに着くと、平日で人の少ない店内に、だいぶ出来上がった旦那を見つける。横のスツールに座る。旦那は透明な液体の入ったロックグラスを手にしている。斜め前にチェイサーグラス。どちらもうっすらと汗をかいている。確かに店内の冷房は弱い。
「何飲んでるの?」
「ん? ズブロッカ」
 旦那がロックグラスをコロコロ鳴らす。
「モヒート、作れるんだって。一緒に飲む?」
 頷くと旦那が二杯注文する。バーテンダーは冷蔵庫からフレッシュミントを取り出し、緑鮮やかな葉を二つのタンブラーグラスに入れていく。砂糖。ソーダ。木の棒でそれらは潰され、クラッシュドアイスが両方のグラスにザラリ。バカルディのホワイトラムがずいぶんとたっぷり注がれる。バースプーンでザリザリと混ぜられる。ストローが添えられ、目の前、それと旦那の前に置かれた。
「カンパイ」
 モヒートはバーによって味が大きく違うけれど、好きなカクテルの一つだ。フレッシュミントを用いるので出してくれない店も多い。ストローで口に含むと広がる夏のイメージ。冷たくて、すうっと甘い。おいしい。旦那も一口飲むとこっちを向いてにやっと笑う。
 いつまでもこんな関係でいたいのよ、きっと。おじいちゃんおばあちゃんになっても、そこまで辿り着くまでの長い時間も、笑顔でカクテルを飲み交わしたい。それはつまり、変化なんか欲しくないという、怯え、なのだろう。
posted by 三里アキラ at 00:14| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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