2011年09月17日

+秋のぬくもりを追いかけた日+

 朝焼けの中、新幹線が発車する。ホームのベンチでぼぉっと見やる。緩やかに動き始めた新幹線はあっという間に加速し、後姿も見えなくなる。ぽつん。朝日がまっすぐにホームを照らす。
 テーブルに置いたグラスに氷を入れ、サイダーを注ぐ。シュワっと白い泡の層が盛り上がり、すぐに消える。無糖なので、口に含むとすっと体に馴染む気がする。眩暈が少し治まる。
 空を飛行機が飛んでいる。
 空をカラスが飛んでいる。
 海の中だろうか。水は冷たくて塩辛い。太陽が燃え上がる。波で息継ぎができず、もがく。泡。魚が踊る。
 空っぽになったグラスに、今度はオレンジジュースを注ぐ。黄色いとろっとした100%。舐めるとすっぱくて、飲めずにそのままテーブルに置く。
 古いボストンバッグは畳んで収納してある。長らく使っていないのでカビ臭いかもしれない。思い切って捨ててしまおうか。
 誰かの声がする。
 誰かの笑い声が聞こえる。
 赤ちゃんの泣き声、と思ったらそれは猫だった。
 足首がヒリヒリする。見るとくらげに刺されたような痕。茨の足枷のように、両足首にぐるりと。
 窓の外に目をやる。流れてゆく景色。この鈍行で終点まで行く。人が乗り込んで降りてまた乗り込んで、けれど少しずつ減って。ボックスシートに読みかけの文庫本を置き去りにして降車する。
 また、ここに、来た。会いたくて。
 日は高く昇りきってしまっていた。眩しくて、人影を判別しようにも陽炎と影であなたかどうか判らない。判らないけれど、駆け出す。あなたと思しき黒に向かって。あっという間に加速し、誰からも見えなくなる。
posted by 三里アキラ at 00:02| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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