2011年11月12日

+夕餉+

 スーパーに行くと生の思い出が並んでいたので買って帰った。つやつやとオレンジ色の切り身は、とても新鮮そうに見えた。
 ホイル焼きにしようと思った。簡単だけど、旬のもので作るとおいしい。たまねぎをスライスし、しめじを裂いた。思い出に塩コショウをし、バターを塗ったアルミホイルにたまねぎを下敷きにして乗せる。しめじはそのさらに上で、一番上にバターの塊を置く。ホイルを閉じ、オーブンへ入れる。
 スープはかき玉汁にしよう。片手鍋に水と白だしと余ったたまねぎスライスを入れて煮立たせる。溶いた卵を、円を描くように細く流し込み、火を止める。
 がちゃがちゃとドアの開く音がして、ちょうどあの人が帰ってきた。出来立てのホイル焼きとかき玉汁を配膳する。あとお茶碗と、今日は平日だから湯呑みと。
 ホイルを開けると、ほわっといい香りがした。箸で思い出の身をほぐす。口に運ぶ。火の通りはちょうどいい。
「おいしいね」
「ありがと」
 ――過去しか食べられないなんて人生の8割損してるって!
 昔、仲の良かった友人に言われた。けれど、二人で囲む食卓はとても幸せです。
posted by 三里アキラ at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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