2011年01月01日

+バニーズ・バーニン+2011お年賀

 カウントゼロでサタデーナイト。
 炎が焚かれた屋外ディスコ。ミラーボールはキラキラキラキラ。読経トランスがんがんかかり、踊り狂うは生き物たち。
 そこにバニガの三人娘。一人はプロのバニーガール、一人はコスプレ照れちゃうね、一人は生のウサギが化けた者。
 DJしていた坊主頭がやってきて、三人娘をナンパする。「食べちゃいたいなあ」にやりと笑う。一人は軽くあしらって、一人は赤面、物陰へ。残ったウサギは火の中へ。どうぞ私を召し上がれ。
 何が起きても誰も知らない。今日は狂ったディスコナイト。すべてが始まるサタデーナイト。



 今年もどうぞよろしくお願いします。
 2011.1.1 三里アキラ
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2010年12月25日

+盗人へ+

 難解な暗号で隠したハートを見つけ、あまつさえ持ち去ろうとした貴方へ「愛してる」と呪詛を。
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2010年12月18日

+謎ワイン+

 太陽の光でほのかに黄色い水を泳ぐ。裸で泳ぐ。ゆらり。冷たい。けれど意識はふわり。不意に人食い魚が私のそばへ。私は食べられてしまう。水に広がる赤、赤、赤。
 グラスのお酒には誰も手を付けない夕闇。
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2010年12月04日

+little smile+

 強い風の吹き荒れる日、花を見つけた。小さく咲く花を見つけた。
 狂っている。そう思った。
 こんな天気では誰の目にも留まらない。現に人通りはまばらで、ミツバチだって飛んでいやしない。飛ぶわけがない。
 俺は花を手折る。狂った花に実をつけさせてなるものか。家に持ち帰り、バカラのグラスに生けてやる。枯れるまで俺の部屋に閉じ込めてやる。
 白い花弁が、ふるり、と揺れた。
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2010年11月27日

+カガミノトビラ+

 鏡の扉に触れてはいけません。扉の向こうは何もかもがサカサマで、この世界で幸せなあなたには酷だからです。
 扉に映るあなた自身がどんなに笑顔でも、身を切られるような、首を絞められるような、心臓を搾り取られるような痛みと苦しみを覚悟しなければなりません。
 それでも開けるのですか?
「ようこそ、正しい世界へ」
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2010年11月25日

+祭り+

 我々は肉に飢えている。望む、贄を捧げよ。
 人でなくて構わない、牛や豚でいい、だめなら魚でもいいが虫はよくない、命の造りが違うのだ。
 肉を捧げよ、我々を祀り宴を開け。火を掲げよ、太鼓を打ち鳴らせ。贄を捧げよ。

++追記。++
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2010年11月06日

+バリアにくちづけ+

 カフェオレを飲んだそのくちびるに噛み付く。貴方は砂糖を2杯も入れていたから、アタシの舌は甘味を感じる。
 貴方は、やさしい。
 アタシが求めて拒否されたことはない。
 くちびるを重ね合わせながら、アタシは貴方のシャツのボタンを外していく。外し終わると左耳を撫で、首筋、鎖骨、と指を這わせ、シャツをはだけさせる。
 くちびるを離し、瞳を見つめる。
 貴方は何も言わず笑顔でいる。悔しくて再び、今度は乱暴にくちづける。むしゃぶりつくように。貴方の手がアタシの髪を触る。アタシは首筋を食む。歯は立てないように。首筋から鎖骨。貴方の指がアタシの頬を捕らえる。一瞬鎖骨からアタシのくちびるが離れた隙に貴方の右手親指が口の中に捩じ込まれた。
 アタシは両手で貴方の右手を掴み、口に含んで丹念にしゃぶる。親指から人差指、中指、薬指、小指、また人差指。私の目から滴が零れる。貴方は左腕でそっとアタシを抱き締める。
「気は済んだ?」
 小さく頷き、貴方の体からくちびるを離す。胸がズンと重い。
 貴方は、ずるい。
 何度も何度も貴方を味わうのに、いつだってアタシと貴方が別の生きものなんだって深く強く見せつけられるだけだ。
「ちょっと待ってて」
 貴方はアタシを独りぼっちにしてキッチンに行く。キッチンから冷蔵庫と氷、何か飲み物を掻き混ぜる音。戻ってきた貴方に「おまたせ」と頭を撫でられ、手にグラスを持たされる。紅い炭酸。舐める。カンパリソーダ。貴方からアタシの頬にそっとくちびるで触れられる。そよ風のようなキス。
 アタシが貴方になれないことに絶望し、アタシはゆっくりとお酒を流し込む。
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2010年10月30日

+ボトルソング+

 雨がやむと、二階のベランダにガラス瓶が落ちていた。中には紙切れ、メッセージボトル?
 コルク栓を開けると中から歌声が聞こえはじめた。取り出した手紙には「感想をください」。
 だが残念なことに、私には返事を出す方法がわからない。
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2010年10月23日

+腐葉土+

 大事にしていたラブレター。古いクッキー缶の中で朽ちてしまった。もうずっと開けていなかったから。気づいたときには読めたものじゃなくて。
 けれども、貰ったときの事は思い出せる。文面も暗唱できるくらい読み込んでいた。与えられた言葉は私の中に木を育てる。
 朽ちたラブレターのふかふかな土壌で、木を育てよう。大きく大きく育てよう。
 嬉し涙の雨が降ればいい。雨が上がれば虹が架かるといい。笑顔の日差しが降り注げばいい。木が、そのうちに実をつけることを祈りながら。
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2010年10月09日

+プラスティックロマンス+coloveration

 創造主を失った未完成のオブジェが夢の島へ遺棄された。舞い降りた一羽のカラス。求愛を始める。
 ずっと、それはずっとずっと続いた。カラスの寿命が尽きるまで。応える術を持たないガラクタは、ただそこにあり続けた。ずっと。

++追記。++
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2010年10月02日

+キスがしたいの+

 私ね、舌がちょっと敏感すぎて刺激物は全然食べることができないの。アメリカンコーヒーでも苦くて苦くてたまらないし、チョコレートもダメ、ワサビももちろんダメ。間違ってカレーなんか食べちゃった時は辛くて辛くて半日ヒーヒー言っちゃう。
 でもその代わりに、すごくすごく薄い味付けでもとっても美味しく食べることができるのよ。焼き魚なんかは塩しなくたって元々の塩味だけで充分ご飯のおかずになるし、旬のお野菜は甘くて甘くて素晴らしいわ。
 ねぇ、キスがしたいの。あなたと。
 あなたの唇に噛み付いたら、あなたのこと全部解りそうな気がするの。あなたを深く味わいたいの。解りたいの。あなたをもっと、もっと深く知りたいの。
 ねぇ。
 キスがしたい。
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2010年09月25日

+その子の名は+

 わぁ、美味しそうなごはん。見た目も食欲そそるし、何よりもいい香り! ね、ね、もう食べていい? いい? まだ? 早く食べたい!
 美味しいね。美味しい。幸せ。
 ねぇ、アタシ幸せ。

 アタシにシッポがあったら、貴方にもアタシがどれだけ嬉しいのか判るのにね。ニンゲンって不便ね。

 うふふ。「カワイイ」だなんて。褒め殺しだよ。うふふふふ。そんな、優しい声で、そっと、囁かれちゃったら、もう顔真っ赤にしてうつむくしかないじゃない!
 照れちゃうよ。照れちゃうって。幸せ。
 ねぇ、アタシ幸せ。

 やだやだ、お風呂いやだ。一緒にお風呂なんていやだ。素顔のアタシを見せるなんてやだ、体のライン見えちゃうのやだ。
 そのままのアタシでいいの? 幸せ。
 ねぇ、アタシ幸せ。

 隠し事しないでくれてありがとう。他に好きな子できたとか、知っちゃったらこっちもしんどいから。ちゃんと言ってくれて良かった。
 良かったの。楽しかったから。幸せ。
 ねぇ。「アタシハ シアワセナノヨ」

 アタシにシッポがなくて助かった。精一杯のカラリとした笑顔作っても、シッポが下がってたんじゃバレちゃうもんね。帰るまでは泣かないの。アタシは幸せだから、人前では泣かないの。


++追記。++
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2010年09月11日

+宝の塔+

 大変に貴重で価値のある宝を多く手に入れたのでこれを収める塔を建設することとする。中身の威厳を誇示する為にデザイン性に力を要れて奪われても良くないので高度な防犯設備を投入した。とても費用が嵩んでしまったので中に入れるものは何も無い。
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2010年09月04日

+秋の日が昇る前に+

 夜明け前。散歩の途中に公園。ブランコで休む。この公園は電燈が一個しかなくて、虫が飛び交っている。キィ、とチェーンが軋む。
 東のほうで『ドサッ』。びっくりしてそちらに目をやるとベルトが落ちている。あれ? 誰かの落し物かな。でもベルトなんて落とすかぁ? なんにせよ、落し物なら探しに来た人に見つかりやすい場所に移動させておこう。三つの星の装飾がついたベルト。なんだかゴツいなぁ。うわ、重たっ。
 と思ったら今度は電燈が突然消えて真っ暗闇。
「すみません」
 男性の声がして、振り向くとなにやら筋肉質の大柄な人影が。「そのベルト、俺のかもしれないです」とか言うから渡すと、腰に巻きつけて満足そうに頷いた。星明りだけでも影くらいは見えるんだな。と、その男。滑り台に向かって走り出した。つるつるの斜面を軽快にタタタタッと駆け上り、そのまま空へ。一瞬キラリと光って消える。
 電燈が明かりを点し、目を凝らすと空にはオリオン座が見え始めていた。
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2010年08月28日

+踊る人形+

 土砂降り。
 そんな中で踊り続ける私は、気が触れたのだとでも思われているだろう。
 髪も服も、汗と雨でびったりと重く肢体に張り付く。動きにくいことこの上ない。
 だが、やめることはできない。肢体を動かす。肢体が動く。肢体に動かされている。
 雨音のクラップ。
 稲光のスポットライト。
 用意されたこの舞台で、踊り続けましょう、いつまでも。
 私は神様のマリオネット。
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2010年08月21日

+巨人の国+

 その昔、国というのは一人の巨人でした。
 巨人の体に住む国民が「海を見たい」と言えば砂浜まで歩き、「雪を見たい」と言えば山に登り、巨人は国民思いの良い国でした。
 ある日巨人は、ふらりとやってきた旅人と出会いました。身軽な旅人は世界中のあちこちを見てきており、巨人はどきどきしながら話を聴きました。かっこいいと思いました。旅人は金の腕時計をしていました。
 旅人が去ったあとでも巨人は国民思いの良い国です。ただ、巨人は国民に一つだけ、お願いをしました。左手首に時計台を作ってくれ、と。出来上がった時計を見て、行くことのない国へ思いを馳せました。
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2010年08月14日

+海の子供+

 赤子というものは、本当はとても聡いのであるが、人魚姫の呪いが纏わり付いている。思考は巡らせど他者と意思疎通をしてはならないのだ。
 呪いが解けるとき、人魚姫はその思考も記憶もさらって行く。


++追記。++
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2010年08月07日

+臨場+

「俺らはいつでも臨場なんだ」
 陽炎のぼるアスファルトを歩きながら、男の方が言う。アシンメトリーショートの黒髪は休日なので立たせている。細い体には白地にピンクストライプの半袖シャツに、細身の黒ジーンズ、履き古した赤いコンバース。少し離れた左を女が歩く。
「臨場。場に臨む。日差し痛い」
 つばの広い白い帽子を被った女が呟くように言う。大きなサングラス、化粧っ気はない。ダークブラウンのショートボブ。タイトな黒いロングTシャツ、インディゴのジーンズ、ナイキのスニーカー。白いストールと小さめのカゴバッグも。
 二人ともそれぞれコンビニ袋を手に提げ、男の方にはビールと水、女の方には烏龍茶が2本入っている。

 20代後半の2人は恋人ではない。友達とも、たぶん、違う。一番近しい言葉は「元チームメイト」。同じ高校の陸上部だった。とはいえ、男子陸上部と女子陸上部は便宜上別の部であったし、高校時代の2人は一緒のクラスになったこともなくほとんど言葉を交わしたことがない。男の方は、背が高くはないが走り高跳びをしていた。女の方は、短距離の補欠だった。

 再会は、今年のインターハイ県予選が終わってからの「監督還暦祝賀会」だった。監督に教えを受けた部員に招待状が送られたはずであったが、同じ学年で出席したのは2人だけだった。学年が3つ違えば知らない人ばかりの中で、見たことのある顔はそれだけで懐かしかった。2人とも実力は大したことがなかったけれど、あの夏は輝いていた。
 会話の中で、2人とも実家を出ていないこと、高校で陸上を辞めたこと、土日は仕事が休みであることを互いに知った。女の方が「再来週、記録会があるんだって。暑いのによくやるよねぇ」と羨ましげに言い、「そうなの? 観戦に行こうかな、どうせ暇だし」と男の方が返した。携帯のメールアドレスを交換し、祝賀会が終わった。監督は相変わらず真っ黒に日焼けしていて健康そうだった。

****
 土曜日、つまり昨日の夜、女から男へメールが送られた。

明日11時着の電車で行くつもりだけど、
駅から一緒に行くなら返信ください。

 1時間半後に、男から女へメール。

じゃあ、東口のコンビニで。
俺はチャリで駅まで行くから、
電車着いたらメールよろしく。
****

「確かに暑いね。俺も帽子持ってくればよかったなぁ」
「夏は嫌いじゃないけどね。ただ、もういい年だからさ、紫外線がさ、ね」
「年とか言ってたら俺、姉貴に殺される」
「あ、お姉さんいるんだ?」
 小さく2つの笑い声。空は快晴。一片の雲もない。じりり、と音を立てそうな日差しが降り注ぐ。競技場が見えた。選手と思しき少年が幾人かジャージ姿でうろうろしている。
「カップルとか思われるかなあ」
「迷惑っ」
「こっちもだって」
「えぇぇ?」
 他愛もない、くだらない、中身のない会話。男は声を出すことを楽しみ、女は無駄であることが愛おしい。笑い声。

 メインスタンドのスタート側に2人は落ち着いた。かろうじて日影。
「まさに、舞台に臨む感じだね。ココ」
「だねぇ。うわぁ、スタートの緊張思い出しちゃうよ」
 男子110Mハードル予選が始まるところで、黒くしなやかな選手たちが集まっている。彼らを見る女の目は、けれど彼らを見ているわけではない。彼らに「高校時代の自分」を投影し、「過去の自分」を見つめている。男も彼らに目を向ける。引き締まった筋肉と、集中を高める為の屈伸や腿叩き。男もまた、彼らを通してかつての夏を思い出す。
「臨場」
 男が口に出す。
「りんじょう」
 女が繰り返す。
 言葉は、ただ2人の意識を「現在」に繋ぎ止める為だけに発される。声を出していないと「過去」に行ってしまい、もう戻って来れない気がしている2人。戻って来れなくたって、たぶん誰も、当人たちさえも困らないけれど、それはきっと「しちゃいけない」ことであるという認識が離れない。
「臨む」
 今、その瞬間に。
「のぞむ」
 この先を、未来を。
――位置について
 予選で選手紹介のアナウンスは流れない。スタート地点のスピーカーからスターターの声。
――用意
 パン。と乾いた音。スターティングブロックから弾けた8人が駆け出す。男のかつての姿ではなく、女のかつての姿でもない。スムーズなハードリングで8人は前を過ぎ去り、後姿となる。ゴールを切ったようで、順に肢体が緩んでゆく。見つめる2人は現在に引き戻される。
「若いねえ」
「俺らも若かったんだけどね」
 太陽は天辺に近付き、グラウンドを焼いてゆく。気温は上昇を続け、日影でも汗が滴る。不快ではない。次の組がスタート準備を始める。
「来てよかったわぁ、うん」
「何それ、ノスタルジー的な意味で? ふふ」
 今に身を置き、意識が飛び回る。過去と未来と。碇としての共通点、2人は互いをほとんど知らないけれど、似たものを見てきたらしい。
「あたしはマイルリレー終わってから帰るけど、どうする?」
「それほとんど終りじゃない。俺も最後まで居ようかな」

 フィールドの緑。強い青色の空。赤いトラック。白い光。
 2人はココに居る。ココに居た。熱く緩く、風が流れている。

++追記。++
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2010年07月31日

+わすれもの+

 鳩が言う。「ねえねえ、一緒に飛ばない?」
 僕は笑って返す。「あー、翼をどこかに忘れてきちゃったんだ」
 猫が言う。「お腹すいたんだけど、何か持ってない?」
 僕はちょっと考えた。「食べ物は忘れてきちゃったなあ」
 鼠が言う。「家の鍵持ってないんじゃない? いいの?」
 僕は確認した。「あれ、ほんとだ。忘れっぽいなあ」
 影が言う。「ねえ、なんで動かないの?」
 僕は応える。「体も忘れてきちゃったかな」
 風が言う。「あんた、どこに行くんだい?」
 僕は気付く。「そういえばどこに行くんだったか忘れたな」
 雨が言う。「嫌なこと、あるなら流してあげようか?」
 僕は戸惑う。「何もかもを忘れてきちゃったようだ」
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2010年07月24日

+キラキラ+

 カラスのお姫様はキラキラしたものが大好きです。ダイヤモンドの指輪にクリスタルのワイングラス、銀のコイン。国中からキラキラしたものを集め、部屋に並べて飾っています。
 お姫様はカラスなので、空が夕焼けに染まり始めると眠る準備を始めます。今日も真っ赤な太陽を見送りながらお休みになりました。
 ところが、夜中に目が覚めてしまいました。経験したことのない、何も見えない真っ暗闇に不安が募ります。窓の外でネズミがチュウと鳴きました。手探りで窓に辿り着いてなんとか開けると、ネズミが話しかけます。
「お姫様、あなたはキラキラしたものがお好きだとお聞きいたしました」
「ええそうよ、キラキラしたものが大好き。国中のキラキラを集めたわ」
「そんなお姫様が早寝なんてもったいないことでございます。夜には素晴らしいキラキラがございます」
「そうなの? ぜひ見てみたいわ」
「では私の後をついてきていただけますでしょうか」
「ええ、暗くてよく見えないけれどお願いするわ」
 二人は窓から外に出ました。黒だけの視界を、ネズミの声と足音を頼りに進んでゆきます。小高い丘に着きました。
「ご覧ください」
 時間のおかげで闇に少し目が慣れていました。見上げると満天の星空。お姫様は息を飲み言葉を失いました。ため息だけが漏れます。
「どうです、キラキラしているでしょう? 残念ながらお姫様のお部屋に持ち帰ることはできませんが、晴れた夜ならいつでも見ることができます」
 すっと一つ、星が流れました。
「夜は苦手なのよ。苦手だけれどこれは素晴らしいキラキラだわ。ありがとう」
 あくびが出て眠気がやってきました。
「お姫様に喜んでいただけて光栄です。ではお城に戻りましょう」
 来た道を辿り、窓からお部屋に戻りました。ネズミはペコリと頭を下げ、去りました。再びベッドに戻ったお姫様はぐっすりと幸せな気持ちで眠りました。
 それからカラスのお姫様は、日がしっかりと沈んで星空を見てから眠りにつくようになりました。
posted by 三里アキラ at 00:05| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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