2010年07月17日

+ペパーミント症候群+

 治療に用いられる薬剤、通称「冬煙草」。シガレット状の一方に火を点けもう一方から吸引する。
 対処療法としては有効だが、呼吸器が凍傷になるほど、熱い。
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2010年07月10日

+肉食獣+

 アタシは肉を食べる。
 じっくりローストしたあばら肉は、香草の香り豊かで柔らかく、持ち上げただけで脂が滴る。その一滴さえも零さないように、私は手に持った肉片に舌を、唇を沿わせむしゃぶりつく。歯を立てるとじゅわりと肉汁が口の中に広がる。健やかで野蛮な獣の味。肉を貪り、骨に密着した部分も削ぎ、骨自体もしゃぶり尽くす。
 アタシは獣。食物連鎖の頂点に立つヒトという獣。食べられて食べられて食べられてきた命に敬意を表し、一欠片も無駄にせず食べつくす。全ての命よ、私の血となり肉となれ。
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2010年06月26日

+燃焼反応+

 ふわふわガーリーな服を脱ぎ捨てた水素。喘ぎながら必死で酸素を求め、熱く熱く燃え上がり、生命の神秘。


++追記。++
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2010年06月19日

+いつもそばに+

 豆腐はすごい。
 肌が白い。でもタンパク質豊富な細マッチョ。
 ポン酢かけただけでも美味しいし、ネギとかミョウガとか乗せるとさらに美味しくなる。
 夏場はひんやりと熱を冷ましてくれる。
 冬場はシンプルに湯豆腐でもいいし、チゲ鍋とかでその身に周囲の味を染み込ませることもできる。
 値段も安価で、お金が無いときでもお腹を満たしてくれる。
 ぼくはあなたにとっての豆腐でありたい。

++「新感覚バトン」++
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2010年06月12日

+勝負ごっこ+

「はい、上がり。僕の勝ち」
「そっかぁ、また負けちゃったなぁ。じゃあ賞品のドーナツ召し上がれ」
 自分のことを僕と言った少年は得意気に、もう7個目のドーナツに歯を立てる。少年は自分がこのゲームに強いと信じている。世間知らず。目の前の、ドーナツを作った人物である魔女の方がずっとこのゲームに詳しく、実のところ強い。ああ、少年は彼女が魔女であることに気付いていない。魔女は少年に甘いカフェオレも渡す。ついでに自分用にほろ苦い食前酒を作る。
「今度は負けないわ、もう1勝負お相手願える?」
「いくらでも受けてあげるよ」
 魔女は、腹ペコ。
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2010年06月05日

+フレンドリーフィクション+

 手紙を「親愛なる君へ」で始める。
 ペンを滑らせる間、君は僕の中で「親愛なる」人物になり、愛は募り胸躍る。思いの丈を便箋に描き「読んでくれてありがとう」と締め括る。綴った言葉に嘘はない。すべてが全くの事実。

 この手紙を読む「君」は、わざわざ僕の話を聴いてくれた愛すべき人である。

 数ヵ月後、郵便受けに君からの手紙が入っている。
 手紙は「親愛なる君へ」で始まる。
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2010年05月15日

+夫婦曲線+

 xとyは同じ式に組み込まれていて、他の式は存在しないから、私たちのことを他人にとやかく言われる筋合いなんてないのよ。
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2010年05月01日

+本に足跡+

 ぱらぱらとページを捲ると女が歩く。
 恋愛小説、海辺のシーン。彼女は麦わら帽を左手で押さえながら、波打ち際を素足で歩く。捲って、街のシーン。グレーのパンツスーツに身を包んだ彼女はCDショップに入る。
 本を替えてみる。
 ペン字実用書。彼女は大切な万年筆で、丁寧に丁寧に手紙を書く。誰宛なのかは知らない。手紙は投函されない。彼女の引き出しに溜まっていく。
 経営論ビジネス書。オフィスでPCに向かい、ぼぉっとする彼女。左のステンレスマグには熱いコーヒーが入っている。
 冒険小説。大量の卵で大きなプレーンオムレツを焼いている。待っているのだ、誰かを。
 ページの草原を歩いて歩いて、歩き続ける彼女。
 けれど本は檻。彼女が僕に声をかけてくれることはない。
 彼女を見失わないよう、僕はありったけのお金で本を買う。
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2010年04月24日

+過食+

 私お腹が空いたの。
 自分で作ったお弁当食べちゃったし、おやつも食べ尽くしちゃった。さっきシュークリーム買ってきたけどすぐに食べちゃったよ。
 みてみて、きれいに食べたでしょ? サラダにスープにお肉にパンにパスタにケーキまで。きっと、作った人も喜ぶよね。ワインあまぁい。ねぇ、でもまだ食べたりないかな。
 貴方から貰ったクッキー、すぐ食べちゃった。お土産の缶詰も食べたよ。貴方がくれた猫も美味しかった。サボテンはさっぱりしてたかな。ねぇ、でもまだまだ食べたいの。
 ねぇ、貴方って美味しそうな首してるよね。あー、お腹空いたなぁ。
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2010年04月17日

+ブラックウェディング+

 漆黒のドレスに身を包んだ彼女は微笑む。
「男は結婚なんて墓場って言うけど、女にとっても同じよね」
 言葉とは裏腹に、とても幸せそうだ。
 控え室には私をはじめ彼女の結婚を惜しむ友人が押しかけている。もちろん祝福の言葉は持ってきている。けれど、彼女が本当に結婚してしまったら、もう、二度と、彼女の大らかな笑い声を聞くことはできないし、凛とした姿を見ることもできないし、なにより、おもちゃ箱みたいな他愛のない話もできなくなってしまうのだ。
「幸せにね」
 私は伝える。おめでとう、さよなら、ありがとう、そんな想いを込めて。彼女が幸せになるならそれでいいのかもしれないのだ。新郎は誰よりも彼女を解っていて、誰よりも彼女を愛している。彼女が求めるものを与えられるのはあの男しかいないのかもしれないのだから。
 今夜は新月。もうすぐ風と共に新郎が来るだろう。銀色のクラウンを手に。そうしたら本当にさよなら。
 彼女は闇夜の王妃となる。
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2010年04月10日

+時間酔い+

 現座標がつかめない。即ち酔っている。上だと思うところが左で、じゃあ右に行こうかとしたら後退していたり。座標がつかめていない。
 気持ち悪い。
 可愛らしいと思った幼児は、しかし物を食べて肥大し、気付けば私を見下ろしている。美しいと思った女性は、しかし夜な夜な隣の男の為に醜く裸体をさらすのだろう。私自身だって、林檎を食べ裸で横になるときがある。
 なんて気持ちの悪い世界。酔いは永遠に醒めない。永遠に。生きている限り。
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2010年04月03日

+あわ+

 命の選択。石鹸を使うか漂白剤を使うか。

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2010年03月27日

+しっぽ+

「あれ、キミのうしろ。それなに?」
「ああ、しっぽだよ。かわいいでしょう」
「かわいい。ふかふかでもこもこで、ねぇ、触っていい?」
「えー、どうしよっかなぁ」
「触らせてよー」
「ひゃあああはははは」
「逃げないでよぅ」
「あはははははは」
「ほぅら、追い詰められちゃった。後ろは大木。ボクがキミの両肩つかんでるから、つまりキミは逃げれない。ね」
「んふふ」
 ちゅっ。
 とさり。
「ね? 逃げれないって言ったでしょ?」
「だぁれも逃げてないのにね」
 ちゅっ。
 がしり。
「ん?」
「ねぇ。オトナなんか来ないから、早くフタリノヒミツ、しようよ」
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2010年03月14日

+退屈な庭+

 神様はサイコロを振りません。一人ぼっちでお留守番させられている子供の神様でも、です。

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+オレンジ色の人+

 朝食にコップへミックスジュースを注いだ。
 明るく染めた髪はよく梳かした。
 昼食は鮭弁当。
 公園で腕時計を見ると午後4時半。西へ。バスに乗って。カラスの声。道路の渋滞。ぐずる子供。海水浴場。誰もいない砂浜。降車。歩く。歩く。足に入り込む砂。歩く。潮の香り。歩く。波音。止まる。ざざん。
 長い髪をなびかせて、夕焼けを見ている。


++追記。++
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+水溶性+

 西病棟一階の患者食、たいていは味噌汁に一振り「喜び」を入れます。
 水溶性の栄養素は一時的に過剰摂取しても問題はありません。飲食や排泄で体内濃度が下がるからです。ただ、水溶性の栄養素は取り続けないと欠乏症を招きます。
 西病棟に見舞い客はほとんど来ず、病気の悪化を食い止めるのが精一杯です。だから私達は少しでも良くなってほしくて一振り。小瓶から一振り。
 患者のほとんどは食事を無理に吐き戻します。

posted by 三里アキラ at 07:14| Comment(2) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年03月06日

+熱病プレイ+

 ご飯奢ったげるし、時計だって買ってあげる。
 尽くしてるんじゃないの、キミの時間を買ってるの。
 アタシが飽きたらおしまい、バイバイ。

 愛されてるキミへの嫉妬、アタシって汚い。
 キミが嫌いだ。キミの瞳に映る醜いアタシが大嫌いだ。

 紳士淑女のゲーム気取って、予定調和の様式美。

 言わないけれど解っているよね?
「私に屈しなさい」「目の前で足掻いて御覧なさい」

 異物としてのキミを受け入れる準備も覚悟もちゃんとあるけど、キミから言い出すまでカードは出さない。我慢できない方が負け。それがルール。

 負けてみようか。ねぇ、ここでだけはキミが払って。
「ねぇ、あたしシェリーが飲みたい」
posted by 三里アキラ at 21:52| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

+沈殿都市+

 私は待ちます。ずっと、ずうぅっと待ちます。ガラスの壁の向こう側に細かな灰色が降り積もるのを見つめます。
 ただでさえ息苦しい夜が不純物で淀んでしまって、私達は呼吸が大変に難しいのです。たくさんいた私達のうち、多くは去ってゆきました。

 透き通った夜に遺灰を入れたのは誰でしょう。マドラーで撹拌したのは誰でしょう。わかりません。
 私は待ちます。いつかきっと全てが終わる日が来るのを待ちます。待ち続けます。

++追記。++
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2010年01月16日

+私がダイヤモンドだ+

 四肢は動かない。
 私という硬い意志が、輝く。
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2010年01月09日

+ゆらりゆらら+

 駅地下の大時計前、17時51分。金魚と「食事しよう」って約束を取り付けたのだ。
「あれー。もういらしたんですねー」
 腕時計を確認しながら笑う金魚は淡いグレーの上品なスーツを着ていた。髪はおろしていて、ゆるいウェーブがゆれる。
「焼鳥と焼肉と、ここは俺も行ったことがあるところで、もう一つは雑誌で見たパスタ専門店。さあどれ?」
 金魚は引いた顎に右手を添え、少しの無言の後、
「焼肉。がいい。……かな、うん」
 と言う。それはたぶん正解。
「腕組んじゃう?」
 冗談で言う俺。応じないことは百も承知。こちらだって組む気はない。
「組む気ないでしょー?」
 ああ、金魚は解っている。笑う。家で見る金魚とはかなり違うが、彼女はやはり、金魚以外の誰でもない。
 連れ立って歩く。駅近く、路地の焼肉屋へ向かって。店で金魚は肉を食べないだろう。俺は、金魚が酎ハイにちびちびと口をつける様をちらりと見ながら、肉と白飯と少しの野菜を食べるだろう。会話は無いだろう。そんなことを思いながら。
 ガラスに映る俺等。金魚の足さばきでスカートの裾が動く。隠れている無数の赤い痣と水色のシーツを思い出しそうになり、慌てて声を出す。
「俺、たくさん喰うから。驚くなよ」

++追記。++
posted by 三里アキラ at 17:13| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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