「まだ終りじゃない」
硝子は窓の外を見ながらつぶやいた。汚れたジーンズ、よれよれのキャミソール。その姿はみすぼらしいかもしれないが、心はしっかりと立っている。
18歳。
もう大人だと言われ、まだ子供だと言われ。理不尽という言葉が嫌い。
「若いんだから」
お前いくつだよ、と誰かに聞かれたら言われるかもしれない。
高校を卒業した。中高一貫の女子校だった。長年親しんだ顔とじゃれあうのは悪くなかった。楽しかったと言っていい。ただ、進学校だったのに就職を希望したのは周りとの溝を作った。
ケータイは鳴らない。
ぽおん、と知らない場所に放り込まれるのはとても心細い。就職先に気の合いそうな人はまだいない。まだ。
「大丈夫よ」
自分に言い聞かせる。
そう、大丈夫。硝子は強い。やっていける。今は少し不安に襲われているけれど、それは夜だから。ニンゲンは昼行性だから。夜になっても街は明るいけれど、日の光には及ばない。
もう何年もぬいぐるみを抱いて寝るようなことはない。