2008年12月19日

#魂を乗せて#

 非業の死を遂げた推理作家の右手は見つかっていない。彼女の部屋に残されたのは書きかけの原稿用紙と万年筆。
 右手は探しているのだ、万年筆を。右手だけに残された創作魂は、万年筆を探し出して小説の続きを書こうとしている。
 万年筆は何処だ。手は今、何処に居る?


++追記。++
posted by 三里アキラ at 07:29| Comment(0) | TrackBack(0) | Pictorial Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月15日

#ナイショ話#

makaroni.jpg
画像提供:篁頼征さん


「ねえ、ナイショの話だよ。誰にも言わないでね? ……僕は君のことが、世界で、一番、スキ、なんだ。ねえ、ナイショにしておいてね?」
posted by 三里アキラ at 14:01| Comment(5) | TrackBack(0) | Pictorial Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年04月05日

#ヘッドライト#

「まだ終りじゃない」
 硝子は窓の外を見ながらつぶやいた。汚れたジーンズ、よれよれのキャミソール。その姿はみすぼらしいかもしれないが、心はしっかりと立っている。
 18歳。
 もう大人だと言われ、まだ子供だと言われ。理不尽という言葉が嫌い。
「若いんだから」
 お前いくつだよ、と誰かに聞かれたら言われるかもしれない。
 高校を卒業した。中高一貫の女子校だった。長年親しんだ顔とじゃれあうのは悪くなかった。楽しかったと言っていい。ただ、進学校だったのに就職を希望したのは周りとの溝を作った。
 ケータイは鳴らない。
 ぽおん、と知らない場所に放り込まれるのはとても心細い。就職先に気の合いそうな人はまだいない。まだ。
「大丈夫よ」
 自分に言い聞かせる。
 そう、大丈夫。硝子は強い。やっていける。今は少し不安に襲われているけれど、それは夜だから。ニンゲンは昼行性だから。夜になっても街は明るいけれど、日の光には及ばない。
 もう何年もぬいぐるみを抱いて寝るようなことはない。
yorunoonnna.JPG
posted by 三里アキラ at 06:01| Comment(2) | TrackBack(0) | Pictorial Story | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする