2011年10月22日

+緑の傘+

 アタシの誕生花ニオイカントウからは過保護な母親を連想します。大きな葉は日光を遮り、周りの草を枯らしてしまうそうです。
 仕事もしない家事もしない彼を横目に晩ご飯を作る午前三時半。客から貰ったアクセサリー類は煩わしいので外します。

++追記。++
posted by 三里アキラ at 00:07| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction 心臓 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2011年10月15日

+その確率+

 ダイヤモンドを氷の中に隠し、氷をロックキャンディの中に隠し、ロックキャンディを水晶の中に隠し、水晶を宝石箱に入れる。
 母から譲り受けた小さな木製の宝石箱は、開けると『禁じられた遊び』を奏でるオルゴール。私はいつも、開ける前にぜんまいをギリギリと巻く。
 あなたに出会えてよかった。
 透明な何かを眺めていると、音楽は次第に速度を落とし、やがて、止まる。
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2011年10月08日

+伴奏+

 小さな講堂の小さなステージで小さな女の子が歌を歌う。その声は伸びやか。客席は暗くて見えない。
 ステージ脇に一台の黒いアップライトピアノ。きちんと調律がなされている。はず。
 ライトが照らすのは女の子だけ。
 聞こえるのは女の子の声だけ。
 それは素朴な童謡。
 女の子には聞こえている。メロディを彩るピアノのリズム、ハーモニー。女の子だけに聞こえている。
 ああ! 誰かこの素晴らしい音楽を皆に聞こえるようにしてください。
 稚拙でも構わないので、頼りなくても構わないので、彼女の声をそのピアノで飾り付けてください。
 ピアノは無言で佇み、女の子の歌が終わりを迎え、拍手の波が小さな講堂を満たしました。
posted by 三里アキラ at 01:35| Comment(0) | TrackBack(0) | Sudden Fiction | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする