どうして先に手に届かない場所へ行ってしまうのですか。遠いところへ。
小さい頃、母親が手を引いてくれました。大きくなり、恩師が手を引いてくれました。今の私はただ一人、見えない目的地へ向かい、歩き続けています。
走る気にはなれません。立ち止まるわけにもいきません。仕方なく、仕方なく、歩いています。
道中の楽しみは足跡を見ることです。驚くべきことに、全ての命あるものがこの道を進んでいくのです。
後進があれば気遣います。先進に追いつける気はしません。早足で追い抜いていく者もいます。
どうして先に行ってしまうのですか。
本当のところ、私はもう歩くことを放棄したいのです。目的地なんてただの言い伝えかもしれないと疑っています。
足が痛いのです。
息が苦しいのです。
戻ってきてください。戻ってきてください。あと少しだけ歩く元気を、私に分けてください。
2011年08月20日
2011年08月13日
+結晶+
純度が高く大きなものを得るためには、ゆっくりと冷却することがポイントです。
小さな身体に知覚を溶かし込み、撹拌します。化合物ができるまでは外から加熱しながら待たなければなりません。早ければ15年、遅くとも25年程で取り出すべきものは出来上がります。ただし、取り出すにはこれまた手間と時間がかかります。個体によって量の多少があることにも気を付けなければなりません。
繰り返しますが、冷却は極めてゆっくりと。状況によっては再加熱を重ねることも必要です。撹拌は控えるようにしてください。これを誤ると身体は破裂します。そうですね、50年もあれば取り出せる大きさにまで成長するかもしれません。取り出した残りは害しかないので身体ごと焼却処分するのが良いでしょう。まあ、取り出した結晶自体が極めて強い毒となる場合があることも周知の事実でしょうが。
これをどう使うかは、あなたの善意に賭けてみたいと思います。
++追記。++
小さな身体に知覚を溶かし込み、撹拌します。化合物ができるまでは外から加熱しながら待たなければなりません。早ければ15年、遅くとも25年程で取り出すべきものは出来上がります。ただし、取り出すにはこれまた手間と時間がかかります。個体によって量の多少があることにも気を付けなければなりません。
繰り返しますが、冷却は極めてゆっくりと。状況によっては再加熱を重ねることも必要です。撹拌は控えるようにしてください。これを誤ると身体は破裂します。そうですね、50年もあれば取り出せる大きさにまで成長するかもしれません。取り出した残りは害しかないので身体ごと焼却処分するのが良いでしょう。まあ、取り出した結晶自体が極めて強い毒となる場合があることも周知の事実でしょうが。
これをどう使うかは、あなたの善意に賭けてみたいと思います。
++追記。++
2011年08月06日
+ペパーミント症候群+
『子供産めないし産まない』
ネットに書き込んで、数分後に消した。その夜、旦那から「たまには飲みに行かない?」と携帯にメール。待ち合わせのバーに着くと、平日で人の少ない店内に、だいぶ出来上がった旦那を見つける。横のスツールに座る。旦那は透明な液体の入ったロックグラスを手にしている。斜め前にチェイサーグラス。どちらもうっすらと汗をかいている。確かに店内の冷房は弱い。
「何飲んでるの?」
「ん? ズブロッカ」
旦那がロックグラスをコロコロ鳴らす。
「モヒート、作れるんだって。一緒に飲む?」
頷くと旦那が二杯注文する。バーテンダーは冷蔵庫からフレッシュミントを取り出し、緑鮮やかな葉を二つのタンブラーグラスに入れていく。砂糖。ソーダ。木の棒でそれらは潰され、クラッシュドアイスが両方のグラスにザラリ。バカルディのホワイトラムがずいぶんとたっぷり注がれる。バースプーンでザリザリと混ぜられる。ストローが添えられ、目の前、それと旦那の前に置かれた。
「カンパイ」
モヒートはバーによって味が大きく違うけれど、好きなカクテルの一つだ。フレッシュミントを用いるので出してくれない店も多い。ストローで口に含むと広がる夏のイメージ。冷たくて、すうっと甘い。おいしい。旦那も一口飲むとこっちを向いてにやっと笑う。
いつまでもこんな関係でいたいのよ、きっと。おじいちゃんおばあちゃんになっても、そこまで辿り着くまでの長い時間も、笑顔でカクテルを飲み交わしたい。それはつまり、変化なんか欲しくないという、怯え、なのだろう。
ネットに書き込んで、数分後に消した。その夜、旦那から「たまには飲みに行かない?」と携帯にメール。待ち合わせのバーに着くと、平日で人の少ない店内に、だいぶ出来上がった旦那を見つける。横のスツールに座る。旦那は透明な液体の入ったロックグラスを手にしている。斜め前にチェイサーグラス。どちらもうっすらと汗をかいている。確かに店内の冷房は弱い。
「何飲んでるの?」
「ん? ズブロッカ」
旦那がロックグラスをコロコロ鳴らす。
「モヒート、作れるんだって。一緒に飲む?」
頷くと旦那が二杯注文する。バーテンダーは冷蔵庫からフレッシュミントを取り出し、緑鮮やかな葉を二つのタンブラーグラスに入れていく。砂糖。ソーダ。木の棒でそれらは潰され、クラッシュドアイスが両方のグラスにザラリ。バカルディのホワイトラムがずいぶんとたっぷり注がれる。バースプーンでザリザリと混ぜられる。ストローが添えられ、目の前、それと旦那の前に置かれた。
「カンパイ」
モヒートはバーによって味が大きく違うけれど、好きなカクテルの一つだ。フレッシュミントを用いるので出してくれない店も多い。ストローで口に含むと広がる夏のイメージ。冷たくて、すうっと甘い。おいしい。旦那も一口飲むとこっちを向いてにやっと笑う。
いつまでもこんな関係でいたいのよ、きっと。おじいちゃんおばあちゃんになっても、そこまで辿り着くまでの長い時間も、笑顔でカクテルを飲み交わしたい。それはつまり、変化なんか欲しくないという、怯え、なのだろう。

